「ビール職人の醸造と推理」エリー・アレグザンダー著、越智睦訳

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 1994年の酒税法改正によって日本でもクラフトビール(地ビール)の製造が急増し、全国各地のご当地ビールが人気を博している。アメリカのシアトルの近くにある通称「ドイツ村」と呼ばれる小さな町、レブンワースもクラフトビールが有名で、当地のオクトーバーフェストには毎年数多くの観光客が訪れている。本書はそのレブンワースのブルワリー(ビール醸造所)を切り盛りする女性が主人公。

【あらすじ】スローン・クラウスはブルワリー〈デア・ケラー〉の経営者夫婦の長男の嫁で、義父母公認の優れたビール職人。不幸な子供時代を送ったスローンは、15年前、クラフトビール業界で、レブンワースを一躍有名にしたクラウス家の長男マックと結婚。子供にも恵まれ、家族が経営する〈デア・ケラー〉のビール職人として幸せな日々を過ごしていた。

 だが、その幸せも夫と店の23歳のウエートレスとの情事の現場を目撃したことで一挙に瓦解。怒ったスローンは夫を家から追い出し、自分は新規オープン予定のブルワリー〈ニトロ〉で働くことにする。〈ニトロ〉の経営者ギャレットは科学者のような精密なビール造りをする職人だが、店の飾り付けや料理などにはからっきしで、その手のことはすべてスローンが任される。その甲斐あって、開店初日は大盛況で幸先良いスタートになった。

 しかし翌朝、同じ町のビール職人が〈ニトロ〉の醸造タンクの中で死んでいた。しかもその容疑者として、夫のマックが逮捕されてしまったのだ……。

【読みどころ】スローンの謎解きもさることながら、本書の魅力はなんといってもクラフトビール造りの細かな描写だ。おまけにビールに合う料理がふんだんに登場するのもうれしい。 <石>

(東京創元社 1100円+税)

【連載】酒をめぐる物語

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