「鬼憑き十兵衛」大塚已愛著

公開日: 更新日:

 寛永12年10月。細川忠利の剣術指南役である松山主水は、光円寺で療養中のところを元加藤家家臣の浪人たちによって暗殺された。

 彼らは「秘密裏に殺せ」というある者の命を受け、主水のみならず寺にいたすべての者を抹殺するつもりだったが、そこに獣のように身軽な少年が現れ、血まみれになりながらも暗殺者たちをすべて返り討ちにしてしまう。

 少年の名は、十兵衛。主水のもとで剣の修行をしていたが、主水が暗殺される前日に実は自分が主水の息子であるという事実を知ったばかりだった。父を殺されたことに逆上し思わず反撃した十兵衛は、その直後に大悲と名乗る鬼に取り憑かれ、そこから父の暗殺を命じた者への復讐へと走り始めるのだが……。

 著者のデビュー作となる本書は、日本ファンタジーノベル大賞2018の受賞作品「勿怪の憑」を改題し、加筆・修正を加えたもの。

 鬼に憑かれた主人公が、亡き父の無念を晴らすために復讐の日々を送るなか、この世のものとは思えない怪しげなものとの遭遇を経て、成長を遂げていく。新人ながらも、緊迫感あふれる見事な描写で読者を引き込む手腕は見事。

 (新潮社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲