「髪結おれん」千野隆司著

公開日: 更新日:

 主人公は、神田小柳町の裏店で6歳年上の姉・お松と一緒に暮らしているおれん。早くに母を亡くし、4年前に父も亡くしたため、髪結いとして一人前になっていたお松のもとで、髪結いの修業をしていた。

 両替屋で手代になったばかりの弥吉から、自分が大番頭になったら所帯を持とうと告げられて、うれしさに胸が躍ったおれんだったが、弥吉は店の金を奪われたことから誤ってやくざ者を殺してしまう。しかも、そんなときに姉に気があるように振る舞っていた蔦次に、姉妹そろって命を狙われるという大事件が起こる。間一髪で助かったものの、お松は右腕を傷つけられて元のようには働けなくなってしまうのだが……。

 入り婿侍商い帖シリーズや長谷川平蔵人足寄場シリーズで人気の著者の最新作。本作は髪結いとしてけなげに働く姉妹に降りかかる苦難と、なかなか思うようにはいかない2人の恋愛模様を描いている。おれんに思いを寄せる郷太や、おれんのお得意さまである三味線の師匠・おえい、おれんの父親と船頭仲間だった八之助、妹を名乗るお房らが登場し、人情味あふれる時代小説となっている。

(KADOKAWA 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗