「書店ガール」碧野圭著

公開日: 更新日:

 1990年代の終わりに2万3000店ほどあった書店は、2019年には約1万1500店と半減している。しかしこのまま減り続け、街から書店がなくなってしまったら、これほど寂しいことはない。なぜなら、本書がいうように「本という物を媒介に人と人がつながっていく。それが書店だ」からだ。

 ドラマ化もされた本書は、そんな人と人をつなぐ書店の仕事の魅力がふんだんに描かれている。

【あらすじ】西岡理子は吉祥寺にある大手書店・ペガサス書房の副店長で、現在40歳。アルバイトで入り、正社員になるまで5年かかった。

 もうひとりの女性の正社員、亜紀は店と取引のある大手文具メーカーの孫で、最初から正社員採用という特別扱い。加えて理子が才能を買っている契約社員の三田を振って大手出版の編集者に乗り換えて結婚したことも許せない。亜紀も、保守的で新しいことをやろうとするとすぐに反対する理子を煙たく思っていて、2人は事あるごとに対立していた。

 そんな折、本部から理子を店長に昇格させるという辞令が下る。喜びも束の間、あと半年で吉祥寺店を閉鎖すると聞かされる。驚いた理子は、半年で月額500万円の売り上げ増を実現すれば閉店を撤回するという約束を社長から取り付ける。性格は違えど、書店員という仕事を愛してやまない理子と亜紀は休戦協定を結び、他のスタッフの協力を得て、売り上げ増のために次々に新戦略を繰り出していく……。

【読みどころ】平日と土日のレイアウト変更、ジャンルを超えた統一企画、万引防止策など、リアル書店ならではのさまざまなアイデアが繰り出されていくが、そこには本を売ることの喜びがあふれている。頑張れ書店、と思わず声をかけたくなる。 <石>

(PHP研究所 686円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁