「世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話」ボブ・エクスタイン著 藤村奈緒美訳

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 オンライン書店や電子書籍の出現によって世の中は便利になる一方だが、読書家にとって書店は何ものにも代えがたい場所であることは間違いない。

 書店はコミュニティーセンターや文化的催しの拠点として地域での役割を果たす一方、待ち合わせの場所や立ち読みなど、店の利益にはならないことを許容する懐の深さも併せ持っている。

 本書は、地域の人々に愛されている世界各地の独立系書店を、店のオーナーや常連客から聞いた、とっておきのエピソードを添えてイラストで紹介するビジュアルブック。

 書店はいうまでもなく、本と読者を結ぶ出合いの場である。しかし、書店が結ぶのは本と客だけではない。ルーマニアのブカレストにある「アンソニー・フロスト英語書店」のオーナーは、同店で出会ったあるカップルのエピソードを紹介。彼らは同じ本を買おうとしていたが、その本は店に1冊しかなかった。数年後、2人は夫婦になり再び店を訪ねてきたという。

 書店のオーナーや書店員は、作家や作家志望である場合も多い。カナダのバンクーバー島にある「マンロー書店」は、今は元銀行の美しい建物に入っているが、もともとはマンロー夫妻が開いたペーパーバックを扱う小さな店だった。妻のアリスは、店で働くうちに「私なら、こんなのよりいい本が書けるわ」と作家に転じ、2013年にノーベル文学賞を受賞してしまう。夫は妻と離婚後、50年以上も書店のオーナーを続け、店員4人に店を譲り引退したそうだ。

 その他、イラスト入りではなく本物の写真が載っている恐竜の本を探しているという客への対応に困ったと語るアメリカ・シカゴの「バーバラ書店」のマネジャーや、娘のための本を探しに来店したデビッド・ボウイにそうと知らず、店のディスプレーの手伝いをさせてしまったアメリカ・ニューヨークの「ゴールデン・ノートブック」のオーナーなど。店を利用する客や有名人たちのエピソードも楽しい。

 中には世界最古を自任する1745年創業の「モラヴィア書店」(アメリカ・ペンシルベニア州)や、店の広さわずか10平方メートル、「最大の小型書店」を謳うインド・チェンナイの有名書店「ギグルズ」、かつて防空壕だった巨大な地下空間を利用した中国・南京の「先鋒書店」、旋回する砲塔のついた戦車型の車に大量の本を搭載して各国を巡り、出会った人々にただで配る「大量開架兵器」など。本好きなら一度はのぞいてみたい店ばかり75の書店を紹介。

 味のあるイラストに想像力をかき立てられ、それぞれのエピソードが物語として絵の中で動きだすかのようだ。(エクスナレッジ 2400円+税)

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