「『家庭料理』という戦場」久保明教著
私たちがイメージする「家庭料理」は1960~70年代に生まれた「モダン」な家庭料理だ。その後、80~90年代の「ポストモダン」な家庭料理、2000~10年代の「ノンモダン」な家庭料理が生まれた。無理せず「ご機嫌な」生活を実現するためのレシピを発表したのが、料理研究家の小林カツ代で、例えばひき肉をワンタンの皮で包まずに、スープにひき肉、豆腐、ワンタンの皮を直接入れて煮る、という簡単な調理法を紹介している。それは単に時間を短縮するだけでなく、定説に従わなくても「知恵と工夫でカバーすればご機嫌な生活が送れる」というメッセージなのだ。
他に、栗原はるみのレシピなどを挙げて、文化人類学者が、家庭料理とは何か、「我が家の味」とは何かという問題に迫る。
(コトニ社 2000円+税)