著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「夢でもいいから」亀和田武著

公開日: 更新日:

 無名時代の三谷幸喜のカラオケを聞いただけで、コイツ天才だと直感したときのこと。デビュー直後にインタビューした尾崎豊のこと。三茶で飲んでいたらコント赤信号の小宮孝泰が現れて、親戚のオジさんが川崎長太郎であることを知った夜のこと。芸能人や作家、プロレスラーに歌手、さらには政治家やテレビの裏方まで、意外な顔や行動、会話などを掘り起こして、さまざまな人生の断面を鮮やかに再生してみせる傑作エッセーだ。

 著者は、1980年代半ばから10年以上、ワイドショーの司会やコメンテーターを務めたので、テレビ業界の裏側も熟知している。本書にはそういう話がてんこ盛りだ。ゴシップ好きを公言しているほどだから、あのとき誰がどう言ったか、という細かなことを実によく覚えてもいる。ゴシップは細部が命だから、亀和田武の筆にかかるとそれらが鮮やかによみがえるのだ。

 たとえば、テレビ朝日のスポーツバラエティー番組「リングの魂」で、「史上最強の格闘家は誰か」をテーマにしたときのことが出てくる。ミッキー安川の破天荒さが印象を残すが、ターザン山本が「宮本武蔵!」と言いだすなど、めちゃくちゃで楽しい。白眉はラストの内田裕也の回。口癖だったという「シェキナベイベエ」が行間から聞こえてきそうだ。ところで、雑誌掲載分102回から今回は24本を収録したとのこと。厳選したとしてもあと1冊は編める。早急に検討されたい。

 (光文社 1800円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束