「交響曲第6番『炭素物語』」ロバート・M・ヘイゼン著 渡辺正訳

公開日: 更新日:

 本を構成する紙からヒトの体を巡る血液まで、身の回りの多くのものが炭素を含んでいる。ヒトにとって大いに役立つ半面、少し原子の配列が狂えば命を脅かすものにもなる炭素という元素には、実はまだまだ謎も多い。

 本書は、カーネギー研究所地球物理学研究所の深部炭素観測の責任者を務める著者が地球と生命の進化の鍵を握る炭素について探究した軌跡を著したもの。アリストテレスの唱えた宇宙の4元素(土・空気・火・水)になぞらえ、深部の炭素を探る第1楽章「土」、旅する炭素を巡る第2楽章「空気」、暮らしの炭素を検証する第3楽章「火」、生命の炭素を探究する第4楽章「水」の4つの章で構成されている。

 空気の章では、地球上の元素は皆循環しており、炭素も例外ではないことを指摘。大気から地殻へ、地殻深部から再び大気へと動くその炭素循環の仕組みをつかむため火山の二酸化炭素を測定した研究者が、火山噴火直前に噴気の二酸化炭素と硫黄の量比が急増するという噴火予知につながる事実を見つけたエピソードを紹介。

 壮大な時間をかけて地球を巡る炭素の不思議を楽しみたい。

(化学同人 2400円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  3. 3

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  4. 4

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  5. 5

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  1. 6

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  2. 7

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  3. 8

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  4. 9

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  5. 10

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩