「女帝 小池百合子」石井妙子著/文藝春秋

公開日: 更新日:

 小池百合子がおよそ360万もの票を得て東京都知事に再選された。「実話BUNKA超タブー」という雑誌の8月号が「小池を都知事にしてしまう東京都民というバカ」なる特集を組んでいるが、小池に票を投じた「バカ」にこそ改めてこの本を読んでもらいたい。

 前掲の雑誌では「最後のフィクサー」の朝堂院大覚が小池一家を助けた経緯を語り、エジプト副首相のトファミを呼んだ時に、通訳をさせようとしたら、小池が英語でしゃべったことを紹介し、「最後の挨拶ぐらいアラビア語にしてもいいのに、それすら英語だから、アラビア語はぜんぜん喋れないんだと思う。そんな人間が、アラブ世界の東大でありハーバード大であるカイロ大を出てるわけないやん」と断言している。

 これについては「女帝 小池百合子」でも詳述してあるが、「世界」の8月号でこの本を書評した青木理が「怪しげな者の証言が長く紹介されたり」と批判しているのには愕然とした。「怪しげな者」とは朝堂院のことを指しているのだろう。実名を出さずに逃げているが、「怪しくない者」が常に真実に迫る証言をするわけではないし、大体、物書きなど「怪しげな者」ではないか。

 その自覚がないから、石井が指弾しているように「朝日」の牟田口義郎や伊藤正孝、そして「サンケイ新聞」が小池についての間違った記事を大きく載せて、小池の虚像の肥大化に手を貸してしまった。私からは朝堂院より牟田口や伊藤の方がよっぽど「怪しげな者」に見えるが、共同通信出身で、やはり大手マスコミに属していた青木は夢にもそうは考えないのだろう。そこに青木をはじめ、大手紙の記者の限界がある。迫力の点で小池に負けているのである。 今度の都知事選のポイントは公明党、創価学会の動向にあった。小池は学会には丁重に尽くし、学会も選挙でそれに応えた。自民党とは微妙な関係だったが、一貫して支持した自民党幹事長の二階俊博は公明党も含めた新進党時代からの盟友である。自民党を離れて新生党をつくった小沢一郎に対しても小池は最初否定的で「女帝」が指摘しているように「週刊ポスト」の1994年8月6日号で、「新生党に懐疑的です。かつては自民党の中枢にいた人たちの集団で、その清算はまだ終わっていません」と語っている。その小沢と別れる時も小池は二階と行動を共にした。いずれにせよ、性悪の小池を“破産”させなければ日本の政治はよくならない。 ★★★(選者・佐高信)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    俺と巨人ガルベスの大乱闘の一部始終…落合博満さんのヘッドロックには気を失いかけた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」

  5. 5

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  1. 6

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか

  2. 7

    メジャー今オフにも「二刀流ルール」撤廃の可能性…ドジャース&大谷翔平に他球団のやっかみ集中

  3. 8

    “児童ポルノ”で衝撃逮捕!日本サッカー協会・影山技術委員長の素性…「精神的な負担を抱えていた」の声も

  4. 9

    奈良の鹿愛護会が語った現場のリアル…「シカさんをいじめるな!」の裏に横たわっている大問題

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発