「今ひとたびの高見順」山田邦紀著

公開日: 更新日:

 戦争へと突き進んだ昭和の時代に、作家として生きた高見順。満州事変、二・二六事件、太平洋戦争など、彼の人生を揺さぶった出来事とその時代に描かれた作品を追うと、戦前・戦中の日本の社会が見えてくる。特定秘密保護法が施行され、きな臭さが立ち込めている今こそ、高見順を振り返る必要があるのではないか。

 本書は、そうした問題意識をもとに、昭和の証言者としての高見順の生涯と作品をたどったものだ。

 例えばプロレタリア文学に邁進(まいしん)していた時期、治安維持法違反により検挙され拷問の末に転向を余儀なくされた経緯や、思想犯保護観察法によって終戦まで公権力の監視下にあった状況などが描かれている。また、サンデー毎日の編集長が陸軍に出頭を命じられ、以来、表紙絵や写真が急速に「時局に合ったもの」に変化したことなども紹介。多くの人々がまさに高見順の代表作「いやな感じ」さながらに、自由意思をねじ曲げられ、戦争協力に傾いていった様子が克明にわかる。

 彼の作品から立ち上る昭和戦前戦中のファシズムの空気と、今の日本の雰囲気の相似ぶりに驚愕(きょうがく)させられる。

(現代書館 2600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 3

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  1. 6

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  2. 7

    KDDIが楽天モバイルへの「ローミング」終了でライバルの“品質低下”を狙い撃つ

  3. 8

    豊昇龍が長期離脱で大の里までピンチ! “ひとり横綱”の重圧で「共倒れ」にならないか

  4. 9

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  5. 10

    永野芽郁がキャバ嬢で「復帰」もM!LKファンやきもき…共演するかもしれない佐野勇斗への“キラー”ぶり警戒