「脳寿命を延ばす」新井平伊著

公開日: 更新日:

 体の寿命が延びるのは喜ばしいことだが、脳がそれに追いついてこず、認知症を患ってしまっては健康長寿とは言い難い。血糖値や肝臓の数値であれば健康診断で調べることができるが、脳の状態は分かりにくい。

“気づいたときには認知症”とならないためには、早いうちから脳の健康に役立つことをやっておくしかない。本書では、アルツハイマーを中心とした老年精神医学の専門家が、認知症予防のための生活習慣を伝授している。

 著者はまず、糖尿病が最大の敵であると警告している。糖尿病になるとインスリンの効きが悪くなり、それを補おうとして過剰なインスリンが分泌される。アルツハイマー型認知症の要因にアミロイドβというタンパク質の存在があるが、実は過剰なインスリン分泌はアミロイドβの脳への沈着を促進させる恐れがあるのだ。

 また、健康のために控えた方がよい2大嗜好品がたばこと酒だが、認知症に限って言えば酒の方が悪いと本書。これは、神経伝達物質のアセチルコリンの働きを低下させ、脳の記憶系にダメージを与えるためだ。一度に飲む量よりも、毎日飲む習慣が脳へのダメージが大きいため、節酒あるいは断酒が望ましいとしている。

 さらに、脳を活性化させたいなら計算ドリルやパズルなどひとりで行うものよりも、その都度異なる相手の手を予測し自分の手を決めるような、トランプや囲碁、将棋、麻雀などの対人ゲームが有効だという。推察し、思考し、判断を下す作業の連続こそが、思考や判断をつかさどる前頭葉を刺激するためだ。

 運動や聴力低下の改善など、脳のために今日からでもできる18の方法を解説。体だけでなく、脳のメンテナンスも忘れてはならない。

(文藝春秋 800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?