「これからの時代を生き抜くための生物学入門」五箇公一著

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 生物の性には「有性生殖」と「無性生殖」の2種類があり、日常で目にする生物や植物は圧倒的に有性生殖が多い。有性生殖のメリットは、個体同士で遺伝子を交換して新しい遺伝子セットを生み出せば、その中から環境の変化に適応できる個体が生き残れることにある。

 ところが、進化の過程で有性生殖をやめたと思われるのがガブリダニだ。オスはメスと交尾して受精させるが、受精卵が育つ過程でオスの精子の遺伝子は溶けてなくなる。ガブリダニのオスが少ないのは安定した環境下では無駄飯食いのオスは不要、ということを意味している。実は生物という観点からは男性の草食化も同じ。生活資源を女性がひとりで獲得できれば、強いだけの男は不要になる。つまり、男性の軟弱化は社会環境の変化に順応した結果といえるのだ――。

 人間の差別やいじめ問題、LGBTに対する考え方など、ウィズコロナ時代を生き抜くためのヒントを生物学を通して探った面白読み物。「生物学と未来」の章では新型コロナウイルスについて言及。その特性を分析しながら、ウイルスを制することができるか否かは人間が持つ特異的な「利他行動」がとれるかにかかっている、という一言にはっとする。

(辰巳出版 1500円+税)

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