「世界の気象現象」ロバート・J・フォード著、戸田早紀訳

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 気象庁による「数十年に一度」という大雨や暴風などの特別警報や、「命を守る行動」を呼びかけるテレビの天気予報など。ここ数年、耳慣れない言葉を頻繁に耳にするようになった。地球温暖化による影響は、日々の気象に如実に表れ、もはや他人事では済まされない。災害だけでなく、気象は農作物の出来を左右するなど、人間の暮らしにも密接している。

 太陽の熱が大地を温め、気圧が生まれ、風を生み出す。それが雲の形成に作用する。一方で海上に吹く風が気流と嵐の発生に手を貸し、遠く離れた場所に降雨をもたらす。一つ一つが微妙なバランスの上にお互いに関係し合って、複雑な気象現象がつくり出されるのだ。

 本書は、そんな気象の諸現象を撮影した写真集である。

 ページを開くとまず目に飛び込んでくるのは、雨の中、まるまった葉の陰に収まり、まるで雨宿りをしながら景色を楽しんでいるかのようなインドネシアのカエルの写真(写真①)。モンスーン(季節風)シーズン、インドネシアでは幾度となく土砂降りの雨に襲われる。雨期は、モンスーンの吹き方によって地域ごとに時期が異なる。

 これはインドネシアがアジアとオーストラリアに挟まれた位置にあるためだという。

 雨は、すべての命になくてはならない水を再配分する役目を負うが、行き過ぎた降雨は災害をもたらす。

 土壌は毎時25ミリを超える降雨を効果的に吸収できない。結果、鉄砲水や大規模洪水が引き起こされる。洪水になったイングランドのヨークやスリランカのコロンボ、インド・ケララ州などの写真が並ぶ。

 豪雨とともにもたらされる雷は、負電荷を地球に戻すのに役立っている。地球全体で毎年、10億~30億回発生する落雷によって、大地と大気の間の電気的なバランスが保たれている。

 ベトナム・ハロン湾やローマのサンピエトロ大聖堂の空を切り裂く稲妻の写真(写真②)は、神々しいまでの自然の営みの迫力を感じさせる。

 稲妻は、植物の成長に不可欠な硝酸塩の生成や、地球を有害な紫外線から守るオゾンをつくり出すなど、それぞれの写真に各気象に関する知識・解説が添えられており、写真の迫力と相まって少々難解な話も、興味をそそられ、ついつい読んでしまう。

 その他にも、わずか20分の間に1・5メートルも積もった「雹」に覆われたメキシコのグアダラハラの街中(写真③)や、「霧」に煙るロンドンのウェストミンスター宮殿、カナダのブラッグ・クリークで観測された珍しい「夜光雲」、世界一暑い砂漠、アルジェリアのサハラ砂漠を覆う「降雪」、「熱」による干ばつで一面が枯れたオランダの小麦畑、「台風」による高潮で巨大な波が押し寄せる三重県紀宝町や、スーパー台風が通過して壊滅的な被害に遭ったフィリピン・レイテ島など。

 地球にさまざまな表情をつくり出す、人間の力が及ばぬその強大なエネルギーを目の当たりにして、ふと人類の未来に思いを馳せるだろう。

(河出書房新社 3800円+税)

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