「宇宙考古学の冒険」サラ・パーカック著 熊谷玲美訳

公開日: 更新日:

 人知れず地下に眠っている遺跡を発見・発掘する考古学の世界は、この数十年で格段の進化を遂げている。特にホットなのが、人工衛星から送られてくる画像データを分析して遺跡の発掘につなげる「宇宙考古学」の分野だ。本書は、宇宙考古学の第一人者で、2016年に衛星画像から遺跡を探すクラウドソーシングのプラットフォーム「グローバルエクスプローラー」を作り上げた考古学者による、宇宙考古学紹介の書。高解像度の映像が安価に手に入るようになったおかげで、遺跡の発見の形は大きく変わった。

 本書の中でも特に興味深いのが、一般庶民でも宇宙考古学の発見に参加できるクラウドソーシングの仕組みを解説している第12章。学生やテクノロジーに詳しい人はもちろんのこと、家から出ることが難しいけれど時間と好奇心はたっぷりある高齢者も考古学の発見に貢献することができると著者はいう。

 人間が築いた文明の栄枯盛衰がどのように起こり、どのように新たな歴史が上書きされていくのか。地層を一枚一枚めくるようにして現れた破滅した世界から、私たちが学べることは思いのほか多そうだ。

(光文社 2400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々