タブレット純(歌手・タレント)

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4月×日 ぼくが在籍しておりました「和田弘とマヒナスターズ」は嘗ては華やかなスターバンド…だったはずながら、それは昭和のおとぎ話でのこと。イブシまくったその銀の背中、いや、シッポに乗れたことは大変光栄なことでしたが、夢終わり、平成も終わり、ひとり放たれた深海で、いまだくらげのように「幻」「光と影」「消えた」そんなワードが踊る昭和の物語ばかり追い求め生きているような気がします。

 そんなぼくが思わず惹かれた「最弱球団 高橋ユニオンズ青春記」(白夜書房 1980円)のタイトル。

 騒乱期ならではの「徒花」であり「犠牲」ともなった悲劇のインディーズ球団の物語。しかしそこには、現代のデジタル化されたスポーツの常識ではあり得ない、喜劇的な土臭い人情が溢れています。著者の長谷川晶一さんはきっとこの世の月見草を愛する身空に違いない。お会いしたいなぁ。

4月×日 とかく中古レコードの裏面と密かな友情を結んでしまうことが多いぼくなのですが、これまたタイトルだけで濃縮果汁ほとばしる「『裏昭和史探検』風俗、未確認生物、UFO・・・」(朝日新聞出版 1430円)。末井昭さんが寄せられた帯の文が見事に全てを表していると思いますので引用させていただきます。

「記録に残らない昭和の夜の風俗を、調査と体験で正確に網羅した貴重な本。読み物としても面白い。」著者の小泉信一さんも末井さんも存じているのですが、人生の「照れ」を知った、そして「衒い」のない、心優しき超B面なお方(失礼!)。自分の存在もB面と思ってひっくり返してくださってるのなら嬉しいなぁ。

4月×日 「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー (角川書店単行本)」(KADOKAWA 1760円)。著者の桜木紫乃先生もまた、日陰に咲く花を紡ぐために地上に降りてこられたような。あまりに悲しいとき、自分はふふっと吊革に揺られながら笑っていることがよくあるのですが、涙の奥に散る花に沢山出会える夜の河がここにもありました。この作品のモチーフ、大竹まことさんが若かりし日にドサ回りをした釧路と、ぼくがマヒナで最後の公演となった釧路が時空を超え一つの真空管の中、また美しきB面のノイズ、ペーソスの雨が止みません。

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