「持続可能な資本主義」新井和宏著

公開日: 更新日:

 近年、世界中で資本主義の“息切れ”が続いている。

 仕事をして給料をもらい、その金でモノやサービスを買ったり、ときには金を貯めたり投資したりする経済活動のプラットフォームとなっているのは、資本主義というシステムだ。しかし現在の資本主義は、短絡的な利益の追求にとらわれすぎている。そして、“効率よく稼げるかどうか”が最大のモノサシとなってしまった。その結果、「誰が、誰に、何のために」お金を投じるのかという金融の根本部分が見失われ、リーマン・ショックのような事態につながった。

 人と社会を犠牲にする資本主義には永続性はないが、かといって今さら資本主義を全否定することは現実的ではない。ならば、これからの資本主義はどのようにあるべきか。

 本書ではその姿を、「八方よし」の経営であるとしている。売り手よし、買い手よし、世間よしという近江商人の商人道を象徴する「三方よし」を時代に合わせて進化させ、株主や経営者、取引先、そして社員から地域社会まで、すべてのステークホルダーを満足させる企業こそが持続可能であると説いている。

 理想論でありきれいごとと思う人もいるだろう。しかし本書では、「八方よし」を現実に実践している企業を紹介している。地域貢献を“本業”だと言い切る「かんてんぱぱ」のブランドで知られる伊那食品工業、漢方薬事業の拠点として財政破綻した夕張市を選んだツムラ、途上国に好待遇の働く環境をつくり続けるマザーハウスなど、「リターン=金」という定義を捨て去った企業だ。

 信頼やつながりという、企業にとっての見えざる資産の重要性に気づくこと、持続可能な資本主義こそが、今後企業が生き残る鍵だ。

(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1100円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  2. 2

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か

  5. 5

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  1. 6

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  2. 7

    三山凌輝に「1億円結婚詐欺」疑惑…SKY-HIの対応は? お手本は「純烈」メンバーの不祥事案件

  3. 8

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  4. 9

    佐藤健と「私の夫と結婚して」W主演で小芝風花を心配するSNS…永野芽郁のW不倫騒動で“共演者キラー”ぶり再注目

  5. 10

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意