「邪教の子」澤村伊智著

公開日: 更新日:

 少女・慧斗が住む光明が丘ニュータウンに、車椅子に乗った少女の一家が引っ越してきた。しかし、少女・茜はなかなか学校に来ない。心配した慧斗が家を訪ねると、母親はコスモフィールドという新興宗教にハマっており、茜は部屋に閉じ込められ、また虐待も受けているようだった。

 見て見ぬふりをする大人たちをヨソに慧斗は茜を助けたいと、同級生の朋美、祐仁と共に救出作戦を練る。大人たちの会話から知った「脱会屋のみずはし」を探し出して協力を仰ぐと、近く、コスモフィールドのセミナーが開催されることが分かった。セミナー当日、隙を見て茜を連れ出すことに成功した慧斗たちだが、追ってきた教祖と信者たちに取り囲まれてしまう。しかし、そのとき奇跡が……。

 と、この少女・茜の奪還成功で物語は終わりかと思いきや、これはまだ序章で実は慧斗の回想録。

 数年後、回想録を手にしたテレビディレクターの矢口が、今度は慧斗が会長を務める「大地の民」を探っていく――。

 慧斗と同級生・祐仁との関係、矢口の失踪した母親など、やがて明かされる真実に驚愕。教団世界の閉塞感がじわじわと迫るサスペンスだ。

(文藝春秋 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い