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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

透明書店(蔵前)AI「くらげ」がおすすめ本を提案

公開日: 更新日:

 去年4月のオープン当初、「AIが接客する」「毎日売り上げを公表する」と話題をさらった。実は、私は「絶滅危惧個人商店」の文庫本が出た後、トークのお誘いをいただき、今春に一度伺ったことがあるので2度目の訪問だ。今日は隅々まで見せてもらおうと意気込みつつ。

 入り口を入ると、右手に店のモチーフである「くらげ」のキャラクターがゆるゆる動く大きな液晶画面が目を引く。「聞きたいことを、ここへどうぞ」と店長の遠井大輔さん(42)。では──。「夏に似合う本は?」とキーボードを叩いたら、「『夏みかんの午後(永井宏、信陽堂)』が在庫にあるよ」と、チャット的に即答がきて、在庫数まで教えてくれた。面白い。

小ビジネス支援の書店らしく業種別“お仕事本”や小出版社の本ずらり

「個人事業主やスモールビジネスの人に、クラウド会計サービスを提供しているフリー株式会社が親会社。フリー株式会社が1000人規模に大きくなったので、自分たちもスモールビジネスを実践しようと始めた書店です。せっかくだから、数字も可視化しようと」と、遠井さんもすらすら話してくれる。で、オープン以来、1日の売り上げはいかほど?

「最高は20万円以上、最低は2000円台でした。SNSのフォロワー数5000人ほどです」

 では、本棚へ。「やわらかい頭の作り方」「翻訳できない世界のことば」を横目に奥に進むと、小ビジネス支援の「透明書店らしさ」満開だ。

 まず、テーマがさまざまのリトルプレスが大集合した棚。続いて、「飲食店」「喫茶店・カフェ」「教育・学習支援」「社会福祉・介護」などと細かく業種別に分けた“お仕事本”がずらりのところ。さらに、小出版社42社が一堂に会したエリアが圧巻だった。

 1社1ブース形式。「三輪舎」「エトセトラブックス」「点滅社」など既知の版元のブースに先に目がいくが、初見の版元も目白押し。どの本も渾身のつくりだと伝わる。遠井さんが「沖縄には『県産本』と言って沖縄以外に出さない版元もある」とボーダーインクという版元を教えてくれたり、料理家・文筆家の高山なおみさんの神戸暮らしのエッセー集「毎日のことこと」(信陽堂)をすすめてくれた。クギ付けとなった。

◆台東区寿3-13-14 1階/都営大江戸線蔵前駅から徒歩2分、浅草線蔵前駅から徒歩5分/12~19時(イベント開催日などは変更あり)、火・水曜休み

ウチのオススメ本

「東京となかよくなりたくて」satsukiイラスト、月水花著、月と文社 2420円

「上京してきたこと、社会人として働くこと、人と接すること……。特に東京で暮らしたことのある人には『あ、わかる』と思うに違いない感情と風景が、渋谷、下北沢などの街や春夏秋冬に分けて、イラストと短編でつづられています。面白いのは、全編に英訳が載っていること。また、全編にイメージBGMとして、80年代~の曲のタイトルも掲載されています。去年の12月に出て、ウチでもう30冊ほど売れています」

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