「日本語と漢字」今野真二著

公開日: 更新日:

「日本語と漢字」今野真二著

 サブタイトルに「正書法がないことばの歴史」とある。音声言語を文字化するときに文字化の仕方が1つしかなければ、その言語は正書法があるという。一方、英語のheartを心・こころ・ココロと複数の文字化ができる日本語は正書法がないことばということになる。歌詞などで「時代」「時間」と書いて「とき」と読ませたり、漢字で「かたい」と書くときに、硬・固・堅のどれを使うべきか迷うのも、そうした日本語の特徴によるのだろう。本書は正書法がないという観点から「日本語の歴史」を見直していこうというもので、「漢字・漢語」がどのように日本語の内面に入り、影響を与えてきたかに重点を置いて論じられている。

 日本語は仮名が生まれた9世紀末以降、漢字と仮名を使って文字化を行っているが、仮名のみでも表記できるはずなのに、なぜ漢字を使い続けているのか(現在の国語辞書の語のうち、和語が30%強、漢語が50%弱)。その理由は「万葉集」にあるという。

「万葉集」は漢字を表音的に使った万葉仮名で書かれている。しかし、本来漢字は表語文字だから、文字化する場合には単に音を借用するだけでなくその語の意味を取り込んでいる。とはいえ中国語と日本語は別の言語体系であるから、意味を取り込む際になんらかのずれが生じる。そうしたずれを微調整しながら日本語を文字化するシステムが徐々に出来上がっていく。

 仮名が誕生した平安時代以降、平仮名を主に使った「源氏物語」や「竹取物語」などの和文と、「平家物語」や「太平記」などの和漢混交文とが現れ、文字化システムが大きく進展する。それでも和語を漢字1文字で文字化するルールは一定ではなく、江戸時代の漢和辞書には「アラハス」と読ませる漢字が34もあるという。「正しさ」に固執するのではなく、その融通無碍さを楽しみながら使うのが日本語の本来の姿なのだろう。 〈狸〉

(岩波書店 1034円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?