「偏愛蔵書室」諏訪哲史著

公開日: 更新日:

「偏愛蔵書室」諏訪哲史著

 芥川賞作家が1万冊以上の蔵書から厳選した100冊を紹介する批評集。

「青炎抄」など内田百閒の短編を取り上げた章では、作品のすべての脈絡が不可解で、主人公の「私」とともに「ただ翻弄され、理不尽にも小説世界の側から一方的に見捨てられる」と作品の一端を紹介。その独特の不可解は、作者が「主体的に不可解な『文体=人格』を選びとり、確信犯的に書いているがゆえに不可解なのである」と説く。

 ほかにも、たった15ページで「凝縮された物語世界の創造が人には可能である」ことを教えてくれた短編「風呂」(レイモンド・カーヴァー「愛について語るときに我々の語ること」所収)や、渾身の変態(クィア)小説集と評する秋山正美の「葬儀のあとの寝室」など、知られざる文学の迷宮へと読者をいざなう。

(河出書房新社 1320円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  2. 2

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  3. 3

    だから今年の日本女子オープンはつまらない…“簡単コース”で予選カットラインは史上最少「-1」

  4. 4

    森保監督がブライトン三笘薫を代表招集外にしたウラ側…10日パラグアイ戦、14日ブラジル戦へ

  5. 5

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  1. 6

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」

  2. 7

    フリーの風間俊介&生田斗真は大活躍も…旧ジャニ「ドラマ班」次世代は“自称”止まりの寂しい現状

  3. 8

    テレビはグルメ、熊、線状降水帯ばかり…もっと大事なことを放送したくないための隠れ蓑か

  4. 9

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  5. 10

    次の自民党総裁選が誰でも菅義偉が“陰の主役”…絶対王者の力の源泉は何なのか?