「アガサ・クリスティーの家と暮らし」ヒラリー・マカスキル著 富原まさ江訳

公開日: 更新日:

「アガサ・クリスティーの家と暮らし」ヒラリー・マカスキル著 富原まさ江訳

 ミステリーの女王、アガサ・クリスティは、当時の女性としては珍しく不動産購入に積極的で、ロンドンに複数の家を所有していたという。

 幼いころから家に興味があり、ドールハウスに夢中で、1つでは飽き足らず、もう1つ買ってほしいと母親にねだったが、それはかなえられなかった。そこで、既存のドールハウスの下に棚を置き、壁紙を張って新しい部屋に見立て、大豪邸に変身させたという。

 後年、手に入れたそれぞれの家も、彼女は自分の手で装飾を施し、居心地の良い空間に仕立てていったという。

 本書は、そんな彼女の生涯と家の遍歴を多くの写真とともにたどりながら、作品とそれぞれの家の関係を解説したビジュアルブック。

 彼女の創作活動の原点は、イギリス・デボン州トーキーのアッシュフィールドの生家だ。広大な庭での「ごっこ遊び」で想像力を膨らませ、屋内での「ままごと遊び」で内装や装飾への終生の熱意を育んだという。

 生家は1938年に売却されたが、彼女の心には生涯にわたって存在し続け、1973年に出版された最後の長編小説「運命の裏木戸」にも、この生家の庭を思わせる描写が多く見られる。

 父亡き後、母親が経済的に家を維持するのが難しくなったとき、そのお金を用意するために、中断していた小説の執筆を再開したのが、後の大作家への一歩だった。

 ほかにも馬小屋を改装した趣のある家や、近代建築の傑作と呼ばれる集合住宅「ローン・ロード・フラッツ」などロンドンで暮らした家、そして生家と並んで彼女が終生愛した故郷のダート川沿いで最も美しい土地に立つ屋敷「グリーンウェイ」まで。彼女の暮らし、作品が生まれた家々を紹介するファン必携本。

(エクスナレッジ 2640円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網