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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

追悼シドニー・ポワチエ 黒人の夢と希望を世界に示した俳優だった

公開日: 更新日:

 見るモノが何もなく、CNNニュースで、1周年になる差別主義者トランプに扇動された白人暴徒らの連邦議事堂乱入事件の特番を見ていたら、シドニー・ポワチエさんが94歳で逝ったと訃報が流れた。黒人初のアカデミー主演賞をもらった黒人スターの先駆者だ。心に焼きついてるのは高1の時に見た「イン・ザ・ヒート・オブ・ザ・ナイト」、要するに「夜の大捜査線」(67年)のクールな殺人課の刑事役だ。睨まれたら動けなくなるような鋭くて知的な眼光が忘れられない。まさにブラックパンサーだった。

 この映画は心を掴まれる一級のサスペンスものだ。話は人種差別の強いミシシッピの田舎の熱帯夜に起きた殺人事件から始まる。刑事は偶然町にいたために捜査を手伝う羽目に。ガムをくちゃくちゃ噛みながら彼といちいちいがみ合う白人の警察署長も最高で、登場人物の誰もが南部人のいい味を出していた。署長役のロッド・スタイガーはそのガムくちゃくちゃで主演賞をもらった。ポワチエは黒人の夢と希望を、世界に示した俳優だ。

 68年の年末から正月の映画は心が躍るものばかりだ。トニー・カーティスの「絞殺魔」、S・マックイーンの「ブリット」、「荒鷲の要塞」、アラン・ドロンの「あの胸にもういちど」。年明けは「ローズマリーの赤ちゃん」も待っていた。我らも希望に向かって生きていた。ポワチエさん、日本の少年にも夢をありがとう。ご冥福を。

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