著者のコラム一覧
吉田潮ライター、イラストレーター

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

<18>「お父さんかわいそう」母は自宅介護したいと言うが…

公開日: 更新日:

 入所して1カ月。多床室のほうも続々と埋まり、施設内は一気に人口が増えた。呼吸する管を通しているため、びっくりするほど大きな濁音を発し続ける人もいれば、徘徊(はいかい)して施設内パトロールをしている人もいる。玄関は中から外へ容易に出られない仕組みなのだが、業者が開けた隙を見て外へ脱走する人もいれば、一日中首をあり得ないほどの角度でうなだれて過ごす人もいる。

 そんな折、母の“あの病”が再発した。「お父さんがかわいそう病」である。父は要介護度4といっても、他の入居者に比べれば軽症に見える。「家に帰りたい」「こんなところに閉じ込められた俺の気持ちが分かるか?」。父は母に対してのみ、感情むきだしになって愚痴をこぼすので、母の中で再び罪悪感が鎌首をもたげてきたのだ。

 ほぼ毎日、電話で「死を待つだけの施設なんて、お父さんにはまだ早い。ショートステイとデイサービスをうまく組み合わせれば自宅でも大丈夫だと思うの」と話す。いやいや、あの「戦慄のインフルエンザ家庭内感染」や「地獄の16日間戦争」をもう忘れちゃったの? 母も認知症が始まったかと思うほどしつこい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性