著者のコラム一覧
奥野修司ノンフィクション作家

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「本当は危ない国産食品 」(新潮新書)がある。

薬の数を減らして調整すると暴言も暴行もピタッとやんだ

公開日: 更新日:

 認知症になったら「暴れる」とよく聞く。実際、認知症について書かれた参考図書には、譫妄、睡眠障害、異食、徘徊などとともに「暴言・暴行」は「周辺症状」(BPSD)のひとつとされている。でも私は、認知症の人には「障害」はあるが、BPSDといわれるものにはすべて理由があると思っている。もちろん暴言・暴行もそうだ。

 たとえば、「暴れる」にも理由がある。

 都内に住む認知症の家輔さんは、それまで子供を叱ったことがないほど優しい父親だったのに、ある日から人格が変わったように怒りっぽくなった。よく外を出歩くので、妻が心配でついて歩くと、杖を振り上げて殴る。出掛けようとするので、妻が「さっき歩いたばっかりでしょ」と言った途端に突き飛ばされて骨折したこともあった。

 ところが、ある日を境に暴言も暴行もピタッとやんだのだ。薬を調整したからである。

 高齢になると、認知症以外にもさまざまな疾患があって次々と薬を出されるが、家輔さんは18剤もの薬を飲んでいた。特に注意したいのはベンゾジアゼピン系の抗精神病薬である。この薬は筋肉量を低下させるので転倒の原因にもなる。結局、18剤を5剤以下に減らしたら、「魔法のように」暴言・暴行が消えたという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い