著者のコラム一覧
安倍里葎子歌手

1948年、北海道札幌市生まれ。70年に「愛のきずな」でデビュー。83年、橋幸夫とのデュエット曲「今夜は離さない」が大ヒット。その後、桜木健一、松方弘樹らとデュエット曲を次々と発売し、デュエットの女王の異名を得る。

寝たままの母の口に無理に食事を押し込んだこともあった

公開日: 更新日:

 書店でレシピ本を買い求め料理と格闘するが、うまくいかない。料理途中で食材をゴミ箱に捨てたこともあった。

 食事の宅配も利用したが、問題は、母親の食事介護である。母親を椅子に座らせ、安倍さんは箸やスプーンを利用して食べ物を口に運んであげた。

 時々、母親は体が不自由になったショックで、ベッドから起きる気力も失うことがあった。食卓につかせようとするが、むずかるしぐさをする。

「私の頭は仕事のことでいっぱい。もうコンサート会場に向かう時間が迫ってきます。私は心を鬼にしまして、寝たままの母親の口に、無理に食事を押し込んだことがありました。今振り返ると、可哀想なことをしてしまったなと……」

 食事介護も一苦労だが、入浴やトイレの介護でも安倍さんを泣かせた。

 安倍さん親子が住むマンションは、浴槽が深い。細い体の安倍さんは、腕に目いっぱいの力を加え、赤子を抱くように母親を抱きかかえて、両足からゆっくりと入れた。きつい介護作業である。背中を流し、浴槽から母親を出す時は、不手際を考慮し、まず浴槽のお湯を抜いてから体を持ち上げたという。トイレの介護もまたそうである。抱えてベンチに座らせた。でも、安倍さんがコンサートなどで地方に行き、自宅を留守にする時はどうしたのか。

「不憫に思いましたが、リハビリパンツを何枚も重ね着して、母親に我慢してね、とお願いをして家を出ました」

 帰宅すると安倍さんは、自らの着替えなどを後回しにして、まず母親の下着を取り換えた。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態

  3. 3

    高市総裁「首相指名」に漂う不安…自民党内は“厭戦ムード”も燻る火種、飛び交う「怪文書」の中身

  4. 4

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    高市自民、公明からの三行半で早くも本性露呈…「やられたら秒でやり返す」「イキらなきゃ負け」のオラオラ体質

  2. 7

    出来たとしても高市政権は短命…誰も見通せない激動政局の行方を徹底分析(前編)

  3. 8

    佐川宣寿元理財局長のメール開示「遺族と話し合う」…森友文書で加藤財務大臣が明言

  4. 9

    進次郎氏落選もダメージなし? 妻・滝川クリステルが目指した「幸せ家庭生活」と耳にしていた夫の実力

  5. 10

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか