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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

ふさぎ込んでいた乳がん患者を前向きにさせた実家での出来事

公開日: 更新日:

「今度は私がそちらにお世話になりますので、よろしくお願いします」

■「見守っている」と言われている気がした

 弟は、「久しぶりに裏山の風穴に行ってみるか?」と誘ってくれました。中学生の時に遠足で訪れて以来です。

 山の方へ向かって約30分、途中、ユキヤナギの白い花が山道を飾っていました。車を降りてしばらく歩くと、一面、緑の大きなくぼ地があります。座って穴に顔を近づけると、風が吹いてくるのが分かりました。Sさんは手術した右側の手をかざして祈りました。

「この腕を清めてください!」

 近くの山寺から町一面を見渡した後、山を下って帰りました。古い家に戻って仏間で一息つくと、欄間に掲げてある祖父、祖母、父、母の大きな写真が目に入ります。

 おじいさんは川で泳ぎを教えてくれた。おばあさんは、ままごとで遊んでくれた。お父さんは私がいつも徒競走でビリになっても、親が参加する競技に出て1等になって私に賞品をくれた。お母さんはいつもお弁当をつくってくれた……。

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