新型コロナウイルス「動物間」での感染拡大はなぜ怖いのか

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■変異株の動物ACE2への結合を確認

 問題は、新型コロナの変異株はなぜ種の壁を乗り越える可能性を高めることにつながるのか、だ。

「Immunity」という免疫分野の国際的な論文雑誌の2021年6月8日号に中国の研究者による興味深い研究が掲載されている。新型コロナウイルスの変異株のスパイクタンパク質の構造の変化を調べたものだ。

 それによると変異株はスパイクタンパク質の特定部分が変化して、人の細胞の表面にあるACE2受容体への結合がより強固になり、中和抗体では阻害しにくくなっているという。と、同時に英国変異株(アルファ株)と違って南アフリカ変異株(ベータ株)、ブラジル変異株(ガンマ株)はマウスとミンクのACE2受容体を使用し侵入する能力を獲得したと報告している。

「むろん、これはひとつの研究結果に過ぎません。今後その内容が多くの研究者によって何度も何度も検証されなければ変異株により種の壁を越えてさまざまな動物へ感染しやすくなったとはいえません。ただ、いまは犬や猫の新型コロナウイルスが人に直接感染しないとしても別の動物に感染し、そこで新たな変異を獲得して人への感染が可能になるかもしれない。そうなると、新型コロナは未知のウイルスに姿を変えて、手がつけられなくなります」

 そうならないためには「人と動物の健康は一つと捉え、これが地球環境の保全に、また、安全・安心な社会の実現につながる」という「One World-One Health」の考え方を皆が持ち、「人と動物が共存して生きる社会」を目指すよう努力することが必要なのではないだろうか。

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