“隠れ炎症”で過敏になった胃はわずかなストレスでも機能性ディスペプシアを引き起こす!

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今、流行中の胃腸炎が引き金で原因不明の胃痛が急増…

 コロナ禍のストレスで、日本人の半数近くが胃の不調を感じる事態になっている。一方で、大流行している感染性の胃腸炎が引き金になって起こる胃の不調も増えているという。胃腸炎が回復しているにもかかわらず、胃痛、膨満感、胸焼けなどの胃の不快症状に悩まされている人が多いのだ。なぜ、こんなことが起こるのだろうか。

 ◇  ◇  ◇

「コロナ禍のストレスが引き起こす胃の不調の正体の大半は、『機能性ディスペプシア』(FD)と呼ばれる、機能性消化管障害の可能性が高いと思います」と話すのは、消化器内科のスペシャリストで、兵庫医科大学主任教授の三輪洋人先生。

 FDは、胃カメラや血液検査などで原因が特定できないにも関わらず、胃痛や胃もたれ、膨満感、胃が焼ける感じなどの症状が慢性的に続く病気で、2013年に病名が付けられている。

「検査で目に見える異常が認められないのに、胃痛や胃もたれ、膨満感、胃が焼ける感じ、吐き気などの症状が慢性的に続くことがFDであると定義されています。つまり、原因がよく分からないのに胃の調子が悪いというのが機能性ディスペプシアで、日本人の10人に1人、あるいは5人に1人の有病率だと推測されています」

 このFDになりやすい人には、大きく2つの要因があるという。1つは子どもの頃に強いストレスを感じていた経験がある場合。もう1つは感染性胃腸炎を患った場合だ。

「実は、この2つのパターンには、検査では見つけられない、わずかな炎症が潜んでいる可能性が高いという共通点がある。それで胃の粘膜が過敏になり、ちょっとしたストレスが引き金になってしまうのです」

 FDの症状が出ている時、胃にいったい何が起きているのか。

「胃の運動や感覚・知覚は、自律神経がコントロールしています。自分の意思ではコントロールできないのが自律神経ですが、身の危険にさらされるなど、強いストレスを感じると胃の動きが止まったりします。つまり、自律神経が乱れることによって、胃の機能が正常に働かなくなってしまうわけです」

「食べ過ぎない」「十分な睡眠」「乳酸菌」は的確な対策

 逆に、この自律神経を安定させることがFDの症状改善に役立つと言う。

「腹式呼吸・深呼吸は迷走神経を活発にするので良いと言われていますし、瞑想やヨガ、針治療もFD改善に役立つことが科学的に証明されつつあります。また、規則正しい生活を送ることが自律神経を安定させる大きな武器になります。実際、FDの患者さんを診ると、生活が不規則な人が多い。そういう面では、規則正しい生活の指導は大事なことだと思いますね」

 コロナ禍で胃の不調を訴える人が増えているという調査では、予防対策として「食べ過ぎない」「十分な睡眠」「乳酸菌」がトップ3に挙げられているが、果たして的確な対策なのだろうか。

「食べ過ぎないは、過剰な胃酸の分泌を抑えることにつながりますし、十分な睡眠を取ることがFDを改善に導くというのも、多くの実験で証明されています。また、これまで乳酸菌についてのエビデンスはなかったのですが、LG21乳酸菌という乳酸菌を使った臨床試験で、自律神経が安定し、胃の動きもよくなったことが報告されているので、OKだと思いますね」

 FDの一番の引き金は人間関係によるストレス。二番目は健康に対する不安だという。胃カメラの検査をちゃんと受け、自分の胃は大丈夫だと安心することが一番の薬なのかも。

▽三輪洋人(兵庫医科大学主任教授)プロフィル

 兵庫医科大学主任教授。同病院診療部長(消化器内科)、内視鏡センター長。日本消化器病学会機能性消化管疾患診療ガイドライン作成委員長。日本神経消化器病学会理事長、アジア神経消化器病学会理事長も兼任。著書に「胃は歳をとらない」(集英社新書)などがある。

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