著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

新型コロナウイルスは「ウィズ・ヒューマン」へ向かっている 医療情報学教授が解説

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 現行のワクチンは、オミクロン株、とくにBA.2やXE株の感染予防には大した効果はなさそうだが、発表されている数字を見る限り、重症患者や死者を減らすのに役立っている。今後は新株に対するワクチン開発が進み、インフルエンザと同じように、ワクチンと新株のいたちごっこが始まるだろう。

■最後に残るのは「人間の制度」の壁か

 治療薬が出始めてきたのも大きい。今年の4月1日時点で、国内で承認されている治療薬は8種類、開発中が4種類である。飲み薬タイプのものも開発されており、あと数カ月もすれば、安定的に供給されるはずである。

 以上のように、ウイルス側はウィズ・ヒューマンに歩み寄っており、医学・医療は急ピッチでウィズコロナの体制を整えつつある。その意味で、新型コロナのパンデミックは終息に向かいつつあると言っていい。

 あと残っているのは、人間側がつくった「制度の壁」だけである。

 日本においては、新型コロナはいまでも感染症の2類相当に指定されている。そのため感染者の隔離・入院や濃厚接触者の行動制限、感染者数・死亡数の全数報告などを続けなければならず、正常な社会活動・経済活動の再開にとって、大きな足かせとなっている。

 これからゴールデンウイークを迎える時期に、感染者が再び増え始めている。2類から5類(季節性インフルエンザ相当)への変更を行うか、まん延防止措置を再発動するかの瀬戸際を迎えている。

 政府や専門家たちの冷静な判断を期待するしかない。

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