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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

子宮頸がんの放射線治療は手術の先か後か 広島で後遺症を巡る裁判が

公開日: 更新日:

 放射線治療を巡るトラブルが報じられました。広島女性(70)が、呉医療センター・中国がんセンターで子宮頚がんを切除。術後に放射線治療を受けたところ、正常部位の小腸にも照射されたため、放射線性腸炎を起こし食事ができず、点滴での栄養補給を余儀なくされたといいます。

 これに対して女性側は、正常な部位への放射線照射で小腸の機能を失ったことは、担当医の注意義務違反だとして、病院側に損害賠償約2850万円を求めて広島地裁に訴えたのです。病院側は患部のみへの照射は不可能で、事前に説明していたとして請求棄却を求めています。

 この女性のケースはともかく、重要なので少し解説します。体の外から放射線をがんに照射すると、その周りの正常な臓器や消化管なども放射線のダメージを受ける恐れが。それで、大腸や小腸に炎症ができるのが放射線性腸炎です。

 放射線性腸炎には、照射から3カ月以内に起こる早期障害と6カ月以降に発症する晩期障害があります。早期は腹痛や血便、下痢、嘔吐(おうと)など比較的軽い症状ですが、晩期には病変が腸粘膜から腸管に広がり、まれに腸閉塞や腸穿孔(せんこう)を起こすケースがあるのも事実です。

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