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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

子宮頸がんの放射線治療は手術の先か後か 広島で後遺症を巡る裁判が

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 子宮頚がんで放射線の外部照射と膣の中から照射する膣内小線源治療を行った1148人を20年間追跡した調査では、直腸や小腸などに生じた有害事象の発生頻度は全体で約20%。そのうちグレード3以上の重症は、小腸で8%、直腸で5%。特に小腸は、5年以降も発生していて長期の追跡が重要です。

 そこで、重い障害がないように治療前には、綿密な照射計画を立てて、放射線の強さのほか、照射する方向や角度を厳しく精査して腫瘍を確実に叩きつつ正常部位へのダメージを小さくするプランを採用するのです。

 それ以上に診断時の治療法選択も重要になります。今回の女性は、手術で子宮を切除してから、放射線治療を追加しました。術後は、血液循環などが悪いため、放射線治療を後で行うと、腸閉塞など重い障害が出る恐れが高くなります。

 女性のステージは分かりませんが、ステージ2Bについて解説します。この病期で海外のガイドラインが推奨するのは、抗がん剤と放射線を行う化学放射線療法のみですが、日本では手術も併記されています。

 日産婦腫瘍委員会の調査では、2014年の2B期の手術割合は44%。04年の60%より減少傾向とはいえ、放射線の39%を上回ります。こうした手術偏重の歴史的背景から、初期治療に手術が選択されて術後の放射線治療によって悲劇が生まれた可能性は否定できないと思います。

 子宮頚がんを根治できるのは、手術と(化学)放射線治療で、その成績は同等です。術後に放射線をプラスするなら、最初から(化学)放射線治療を行う方が、時間も医療費節約できるし、後遺症のリスクも小さくできます。

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