著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

正常な細胞には感染しない「特殊ウイルス」で脳腫瘍を治療

公開日: 更新日:

 悪性腫瘍(がん)の治療は進歩を続けていますが、20年以上、あまりその予後が改善していない悪性腫瘍もあります。そのひとつが「小児脳幹部グリオーマ」という、脳にできる腫瘍です。その悪性度は非常に高く、診断されてから1年以上生きることは少ないと報告されています。

 この腫瘍が厄介なのは、手術が困難で、抗がん剤にも有効なものがない点にあります。放射線治療のみに一定の有効性があるのですが、その効果も一時的なことが多いのです。

 この厄介な腫瘍を治療するためのまったく新しい治療として、正常な細胞には感染せず、腫瘍のみに感染して腫瘍細胞を壊死(えし)させる特殊なウイルスを作製して、それを直接腫瘍に注入するという方法が開発されています。遺伝子技術で作られたこのウイルスを「腫瘍溶解性ウイルス」と呼んでいます。

 実際に、どの程度の効果があるのでしょうか? 今年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載された論文によると、12人の小児患者にこのウイルスを注入したところ、多くの患者が1年半以上生存し、3人では明確な改善が認められました。

 一方で、まひなどの合併症も報告されていますから、現時点でこの治療が確実に有効とは言い切れません。ただ、これまで治療が困難だったがんの新しい治療法として今後注目であることは間違いないと思います。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった