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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

コロナとマスク着用 「判断する」と「考え続ける」は相反する部分がある

公開日: 更新日:

 しかし、これまで現実に起こったことは何か悲惨な気がする。

 明確な判断を示すことができない政府と、明確な判断を避ける政府の意向を忖度して、義務でもない推奨をあたかも義務であるかのように受け取ってしまう国民、というのが実際のところではないか。政府の意見を受けて、国民一人一人が考えて判断したというのとは違う感じがする。ただそれを「同調圧力」という一言で済ますのもどうかと思う。

 こうした状況で、マスクを外せる場所では外そうという方向性をにじませつつ、個人の判断に委ねるという政府のあいまいなおすすめが、この先の個人個人の行動にどんな変化をもたらすのか、興味深いところである。少なくとも、マスクの着用を義務のように捉えたこれまでと異なり、マスクを外すことを義務だとは考えない人が大部分だろう。

 3月13日以降、急激に屋外でのマスク着用者が減るとは考えにくい。自分自身がそう考える根拠は何かと言われると、はっきりしないところもあるが、顔を見られたくないという気持ちはなんとなくわかる。

 電車内でマスクをつけない人を見かけたときに、「そんなに自分の顔を見せたいか、少しは遠慮したほうがいい」、そんな気持ちがないわけではない。これもまた厄介な気持ちである。イスラム教の女性がかぶるヒジャブを連想する。自分にもそうした何かを抑圧したいような気持ちがある。

 今しばらく考え続けたい。日々のマスク着用は適当にする。行動は適当に、判断を先延ばしにして、考えることに集中したい。

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