著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

欧米の「ロックダウン」と日本の「外出自粛」…個人と全体の問題を考える

公開日: 更新日:

 多くの個人にとって風邪に過ぎないコロナが、全体としては多くの重症者や死者をもたらし、医療機関に過大な負荷をかけ続けている。その相反する状況の中、日本や世界がどのように感染対策してきたかを振り返りながら、個人と全体の問題を考えてみたい。

 日本のコロナ対策は、大枠としては個人の判断に任されてきた。あくまでも「自粛」という形で対策が進められているものが大部分である。これは「ロックダウン」が行われた欧米と根本的に違うものである。ロックダウンは、国民に外出制限を義務付け、そこに国民の選択の余地はない。法的な契約関係である。それに対して、自粛にはあくまでも国民の自発的な対応が求められ、外出するかどうかはあくまで国民の判断の結果ということになる。

 この違いのひとつは、ロックダウンは道徳的、倫理的な判断を国がしているのに対し、自粛は国民側がその判断をしているということだろう。国が決め、国民が従うのが前者であり、国の勧めに基づいて国民が決めるのが後者である。ここには何やら不思議な面がある。インフォームドコンセント、人生会議など、欧米から日本の医療にもたらされたものは、個別の意思に基づく自己決定がその基盤である。個人が重視され、個別の決定を重んじる欧米と、個人より世間の影響が大きく、個別の決定を重く見ない日本というのが背景にある。しかし、コロナの対策として現れたものは逆である。国の決定を重視する欧米のロックダウンと、個人に判断をゆだねる日本の自粛ということである。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言