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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「一言主義」で失われる正しい情報…わかりやすい真実なんてない

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 ただそんな答えに対しては、「一言でというのは、そのようなあいまいな答えを求めているわけではないので、もう少しはっきり言ってください」ということになるのだろう。世に流れる情報は、情報全体の一部に過ぎない。全体をあたかも代表しているかのような都合のいい「一言」が強調されて流される。どの「一言」を選ぶかという解釈がそこにはあるのだが、それを解釈ではなく、情報そのものの結論として流す。「マスクは有効」あるいは「マスクは無効」というように。しかし情報の全体像は、ここまで多くの字数を使って説明してきたように、そういう「一言」では表しがたい複雑なものだ。

 これは情報を流す側の問題だけではない。受け手もまた「一言」を望んでいる。私の1600字ですら読まれるかどうかわからない世の中で、情報全体が流されるとしても、その多くは読まれることなく、わかりやすい一言だけが独り歩きする。

 今日の結論は明らかだ。正しい情報など流れないし、読まれない。わかりやすい「一言」が切り取られて、正しい情報かのように流され、そればかりが受け取られる世の中がすでに確固として出来上がっている。

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