著者のコラム一覧
田中里佳順天堂医院足の疾患センター長

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

「血管再生治療」で糖尿病による足の切断は避けられるのか?

公開日: 更新日:

 動脈硬化による虚血性疾患の治療は、ステントやカテーテルを用いた血行再建術やバイパス術が行われていますが、治療対象は大血管のみで、足首より先にある微小血管に対する治療法は確立されていません。そのため、既存の治療に抵抗性な糖尿病性足潰瘍で足の指が壊疽すると、切断しか選択肢がない現状です。実際、日本では足潰瘍で年間約1万本の足が切断されているといわれています。

 そういった難治性足潰瘍の患者さんの足を救うため、私が研究に取り組んでいるのが「血管再生治療」です。

 1997年に、血管を作る血管幹細胞(血管内皮前駆細胞:EPC)が、骨髄と血液中に存在していると明らかになりました。既存の治療で効果がなく切断を余儀なくされた足に血管幹細胞を移植すると、その後、血管が再生することが分かったのです。

 糖尿病性足潰瘍で足が壊疽し切断を宣告された60代の患者さんは、「どうしても足の切断は避けたい」と、当時、東海大学で再生医療の研究をしていた私のもとを訪れました。そこで壊疽した部位に本人の血液から採血した血管幹細胞を移植すると、血管が再生され傷は治り切断を免れました。その後、再び足壊疽が起こることなく、12年後に亡くなられるまで足を切断することなく、生涯ご自身の足で歩いて過ごされました。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」