著者のコラム一覧
近藤一博東京慈恵会医科大教授

大阪大医学部卒。近著「疲労とはなにか」(講談社)

疲労の謎がここまで分かった(3)なぜ軽い運動が疲労を減少させるのか…酵素の産生を増やす

公開日: 更新日:

 しかし、この状態は、「疲労感」が抑制されているだけなので、「疲労」すなわち細胞の障害は蓄積されていきます。ドリンク剤を飲んで「疲れがとれたような気がする」という現象も、「疲労」の減少ではなく、「疲労感」の減少だと考えられます。

 ならば、「疲労」そのものを減少させて、組織の障害を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

「リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素」という長い名前の酵素があります。この酵素には、生理的疲労を回復させる作用があります。つまり、この酵素を増やせば疲労回復が期待できるということです。問題は、どうすれば「リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素」が増えるのか。この酵素の産生を誘導するのは、軽い運動などの「疲労」なのです。

 実際、被験者に軽い運動を1カ月から3カ月ほど続けてもらって、「疲労回復指数」を測定すると、軽い運動をしたグループは疲労回復指数が上昇していました。軽い運動によって適度な「生理的疲労」がもたらされたことにより、疲労回復力が増強されたためだと考えられます。(つづく)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ