患者にしっかり向き合って力を尽くす医師が減ってきている
患者さんを回復させて元気を取り戻してもらうためには、仕事も環境も生活習慣も千差万別な患者さんの多様性に対し、医師は広い受け皿を持ちながら対応しなければなりません。たとえば、「食事や運動の生活習慣を意識して変えることが望ましいのですが、それが難しいならガラリと変えなくてもいいですよ。その代わり、いくつか薬を処方するのでしっかり飲んでください。費用もそれなりにかかりますが、それは受け入れるしかありません。それさえも難しいようなら、あとは自然に任せるしかありません」といったように、解決策のパターンをいくつか提示して、患者さんに選択してもらう対応ができないような医師は、患者さんに対して不遜であると言わざるを得ません。
■寄り添う姿勢が「無輸血手術」の発展につながった
もちろん、中には仕事が長続きせず自堕落な生活を続けていたり、権利の主張が強い患者さんがいるのも事実です。しかし、医師は患者さんによって姿勢を変えるべきではありません。さまざま事情からそうした生活を強いられ、たくさんの苦痛を抱えながらも生き続け、そんな状況にあっても病気を治して人生を歩んでいきたい……この患者さんにはそんな精神力があるんだな。多くの苦境を乗り越えて必死で生きて病院までやって来て、生命力をつなごうとしている人なんだ……。医師はそういった視点を持って患者さんに寄り添い、対応すべきなのです。