患者数は昨年の54倍…大人の「百日咳」は糖尿病にも悪影響を与える
慢性疾患を抱える人は注意
気になるのは、百日咳菌は新型コロナ流行前後で性質を変え、感染者の年齢層の中心が年長児に移行していること。大人の百日咳はどんな特徴があるのか?
「発熱も軽度の場合が多く、風邪との見分けがつかず周りに感染させてしまうケースが多い。ただ発症しても軽くて済むと言われていますが、肝硬変、腎不全といった慢性疾患のある人は注意が必要です。骨の弱った高齢者は、激しい咳で肋骨を骨折する場合もあります。糖尿病や高齢者のなかには、長引く咳により食事や睡眠の質が低下する恐れがあります。とくに糖尿病の人は血糖コントロールが定まらず、免疫力の低下による2次感染リスクがあり、人によっては長期入院を余儀なくされるケースもあります」
実際、2009年の日本農村医学会学術総会では、北関東の病院がまとめた成人百日咳の外来患者38人(男性22人、女性16人:年齢20~75歳)の症例報告が行われた。
報告では、このうち5人が肺炎を合併、4人が入院した。2人に糖尿病があり、2人は高齢者だった。糖尿病の2人は重症化して長期入院を余儀なくされ、治療に難渋したという。
「予防は、手洗い、うがい、集団内でのマスクが基本ですが、ワクチンが最も効果的です。糖尿病など慢性疾患のある患者さんや高齢者の方、百日咳が重症化しやすい乳児を持つお母さんやそのパートナー、受験期の子供を持つ親御さんなどはワクチンの任意接種を検討するのも手です」