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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

アルツハイマーと診断されていた人の20%は実はそうではなかった

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アミロイドPETとタウPETで診断・治療が大きく変わる

 慶応義塾大学病院メモリーセンターと量子科学技術研究開発機構の研究グループが、アミロイドPETとタウPETの2つの検査を組み合わせて行うことで、認知症の診断・治療が大きく変わる可能性があることを2022年に示しました。アミロイドPETの有効性を示した研究はすでにありましたが、タウPETの有効性を調べた研究発表はそれまでありませんでした。

 研究に協力した107人の内訳は、認知機能が正常な人40人、軽度認知障害(MCI)の人25人、認知症患者さん42人。これらの人にアミロイドPETとタウPETを行ったところ、PET検査の実施後に対象者全体の35%で診断が変わったとのことです。

 対象者の症状別の診断変更の割合は、認知機能正常者で25%、MCIで68%、認知症患者で23.8%。検査やリハビリテーションなどの内容についても、認知機能正常者の5%、MCIの52%、認知症患者で38.1%で変更。

 薬については、MCIで24%、認知症患者で19%が見直しになりました。タウPETの方が、アミロイドPETよりも、検査やリハビリテーションなど治療・管理の変更と強い関連性を持つと、研究グループは発表しています。

 さらにこの研究では、認知機能が正常な高齢者の25%に、アルツハイマー型の原因物質であるアミロイドβとタウタンパクの両方、もしくはどちらか一方が蓄積していたという結果も出ています。現時点では認知機能が正常であっても、原因物質があるということは、この先、アルツハイマー型を発症するリスクがあるということです。

“敵”が分かれば、迎え撃つことができる。私が常々言っていることです。現在は正常で、しかしアミロイドβやタウタンパクの蓄積が見られるようなら、健常な状態からアルツハイマー型を発症しないための非薬物療法をすることができます。

 現状を知ることで対策を講じやすくなるので、もしMCIに至ったとしても、アミロイドβを減少させる新薬レカネマブやドナネマブの投与をいち早く開始できます。薬物療法と非薬物療法の両輪による対策で、認知症発症に至らないまま寿命をまっとうできる可能性も出てきます。

 なお、レカネマブの臨床試験で、2週間に1度、18カ月間にわたる投与で脳のアミロイドβが顕著に減少したことが確認されていますが、私のクリニックでも半年間の治療後に自費でアミロイドPETを受けた4人全員で、アミロイドβの減少が確認できました。“自費”というのは、レカネマブ投与前はアミロイドPETでアミロイドβの量を測定することは必須(保険適用)となっているものの、それ以降の検査は必須ではないため、自費となってしまうのです。

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