数学偏重の医学界…「この世は人知の及ばない摂理に支配されている」のでは
私は冠動脈バイパス手術の職人です。心臓表面の直径2ミリ以下の細い血管のどてっぱらに新しい血管を縫い付ける手術の職人さんです。この技術なら自分以外の誰にも負けないぞ! 自意識過剰で増上慢の俗物です。
日本画家の千住博さんは言いました。
「仕事はキレイではだめです。美しくなければ」
私もそう思います。満足な血管吻合の出来上がりは美しい!
何度も地獄を見て、泣きながら工夫をして築き上げた自分の技術でやり遂げたシゴトの出来栄えは、頬擦りしたいほど愛らしく、美しいものです。その美しさは、常人には理解できないかもしれません。
ロサンゼルスのオオタニさんも、自分の打球がスタンドの上段に突き刺さるのを見て同じ思いでしょう。「キレイ」ではなく「美しい」シゴトは、ボール以外に何かを放っています。人知を超えた、神がかり的状態です。だから、オオタニさんは英雄なのでしょう。
ちょっと小難しい話で恐縮ですが、冠動脈に血管を縫い付けるとき、どのようにしたらいいか、何かコツはないものか、と尋ねられます。心臓外科医なら誰もが持つ関心事です。対峙している目の前の現実に、どう対処すべきか、一般的な法則はないものか、誰もが見つけ出そうとします。