寝たきりになった男性はどのように人間力を回復したのか(1)
その間、肺炎を繰り返すなどして寝たきりが続き、医師からは「もう、これ以上はよくならない。諦めてください」と告げられました。さらに、長期的な看護や介護が必要な患者を対象とした療養型病院を探すように勧められたのです。
しかし、私は回復をどうしても諦めることができませんでした。
当時、夫はまだ61歳と若かったうえ、学生時代にはラグビーをやっていてもともと体力がありました。目は開けられず、声も出せず、意思疎通もままならない状態でしたが、声を掛けると指がピクピクと動き、ベッドのシーツに文字を書くようなしぐさを見せるのです。私の手のひらに、「ありがとう」とおぼしき文字を指で書いたこともありました。
こちらの呼び掛けに反応があるということは、本人は理解できているということです。本当にこのままよくならないのだろうか。もう、しゃべることはできないのか、口から食べられないのか。しっかりリハビリをすれば動けるようになるのではないか……。
■気管切開と経鼻経管栄養のチューブは挿入されたまま


















