痛みをとることを最優先…ランニングプロデューサーの坂本雄次さんは脊柱管狭窄症で手術を選択

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劣勢をリカバリーするにはどうするか考える

 体の使い方が悪かったわけではありません。手術の発端は、19歳のときに起こったある事故にあるのです。電力会社勤務時代、倉庫の屋根裏部屋に機材を取りに行った際、床を踏み抜いて、2メートル下のテーブルの上に落下したのです。一瞬、気を失うような衝撃でしたが、大きな外傷はなく、先輩の助言ですぐに病院で頭のレントゲンを撮ってもらい、脳には異常がありませんでした。

 でも3年後に腰に激痛がきて、腰椎の一部に亀裂骨折の痕があることがわかりました。骨折は治っているものの、腰髄神経が腰椎に触れかかっているという診断でした。

 それ以降は、時折激痛に見舞われてきました。でも痛みは一過性なので若いうちは痛み止めの薬でやり過ごしていたのです。ただ、腰椎自体の配列バランスが崩れているため、60歳過ぎて何度も手術することになったのです。

「24時間テレビ」のトレーナーを引退したのは2024年でした。最後の数年は休憩所でのアドバイスやメンテナンスなどで、伴走する場面は少なくなりましたが、「どんな状況になっても夏のこの仕事はやらなければならない」という気持ちで、45歳から32年間、立ち上げからずっと携わってきました。コルセットをつけたり、場合によっては痛み止めを飲んだりしてね。我ながらよくやったと思いますよ。

 そりゃ引退は寂しいです。でも、プロスポーツ選手が引退するのと同じで、気持ちはどんなにやりたくても、体がいうことを聞かなくなって思うようなパフォーマンスができなければ、後継に託さざるを得ません。

 24年には、それまで私を支えてくれた妻の死という衝撃もありました。私が15歳で一目ぼれした妻です。最後の9年間は入退院を繰り返す中、食事から着替え、何から何まで付きっきりで介護に徹しました。妻を亡くして、めちゃめちゃでっかい空洞があいて、今もその中でもがいています。

 でも私は、劣勢をリカバリーするにはどうするか考えることで、ここまでやってきました。このしんどさの中で、残りの時間をどう過ごすかが、今、自分に課せられていると思っています。

 自分の弱点を恐れないことを病気から学びました。劣勢因子を乗り越えるためにあがいて、悩んで、迷って、悔いたりすることって“学び”じゃないですか。ケガも病気も恐れることはありません。

 人間はどんな人に出会ったか、どんな出来事に出会ったかで変わると思います。いいことも悪いことも全部、自分の血や肉になる。そうやって人生は紡がれる。だから私の座右の銘は「邂逅」と「謝念」。「巡り合い」と「感謝の思い」です。

 (聞き手=松永詠美子)

▽坂本雄次(さかもと・ゆうじ) 1947年、神奈川県出身。76年から独学でランニングを始め、東京電力陸上部の監督を15年務めて退社。92~2024年に日本テレビ系「24時間テレビ」のチャリティーマラソンでタレントの指導や伴走をしたことで知られる。㈱ランナーズ・ウェルネスを設立し、各地で大規模なマラソン大会を企画・運営。著書に24年3月に他界した妻・節子さんとの物語を記した「天国ゆきのラブレター」がある。

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