「最期の時を自宅で」との願いに込められたさまざまな物語
その都度ご家族の気持ちを確認することは、とても重要です。私たちが「大丈夫だろう」と判断し、自宅療養を進めてしまうと、あとあと後悔やわだかまりを残すことにもなりかねません。
「もし難しくなれば、飲み薬をテープや座薬に切り替えることもできます」(私)
「そうですね。でも、まだ飲めているうちは……」(妻)
「では今回は、テープと飲み薬の両方を処方しておきましょうか」(私)
「はい、お願いします」(妻)
薬を口から飲むことも難しくなりつつあるご主人の状態を、奥さまはすぐには受け入れられないご様子でした。その後、次第に薬だけでなく、薄いトーストやプリンさえも咀嚼できなくなっていきました。
そして3日後、訪問看護師から、患者さんの呼吸が停止したとの連絡が入りました。
残された奥さまにとって、できる限りこまめに寄り添い、献身的に看護を続け、無理をすることなく自然な形でご主人を看取ることができたこと、そして最期までご自宅で同じ時間を過ごせたことは、きっと大きな心の支えになっていくことでしょう。
「人生の最期の時を自宅で過ごしたい」という素朴な願いの中には、実にさまざまな物語があります。その物語をご家族とともに紡いでいくこともまた、在宅医療が担う大切な役割なのだと、私たちは改めて感じるのでした。




















