(6)肩を震わせ、しゃくりあげるように泣き出した

公開日: 更新日:

 ショートステイに連れていく日の朝。支度を進めていると、

「……行きたくないよ」

 おかんがボソッと呟いた。聞こえないフリをしていると、今度は「行かなきゃいけないの?」ときた。いや、あのね。圧迫骨折の疑いが濃厚でまともに歩けないのに、自宅で暮らせないでしょ。俺も今日は仕事で戻らないといけないのに、どうやって生活するの?

 昨晩さんざん説明した内容を繰り返すこと30分。同意してくれたのか諦めたのか、何とか車で5分ほどのショートステイ施設まで連れていくことができた。入り口は自動ドアだが前に立っても開かない。インターフォンで呼ぶと中から操作して開けてもらう仕組みだった。

 施設の車椅子を借りおかんを座らせている間、出迎えてくれた担当者は「ドア操作は利用者がうかつに外に出ないための配慮なんですよ」と説明してくれた。すると、

「自由に外出することもできないの?」

 苦虫を噛み潰したような顔で呟くおかん。嫌な予感がしたけれど、ここで何か言うと朝の押し問答の繰り返しになるだろう。聞き流して食堂の片隅で入居のための手続きを進めることにした。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰