(6)肩を震わせ、しゃくりあげるように泣き出した
おかんは5メートルほど離れたところに座っている。よかったらどうぞと差し出された施設のパンフレットには目もくれず、固まったような表情でどこか一点を見つめている。その姿をチラ見するたび、自分がものすごく悪いことをしているような気がしてきた。
嫌がっているのはわかるけど、この状態じゃ仕方ないじゃないか。そもそも杖を使うことを拒否したあげく、無理に出歩かないよう何度も話してきたのに無視してきた結果がこれなんだし……。それでもすぐに駆け付け、最良の方法を最速で進めてきたはずだ。自分に言い聞かせていた。
手続きが終わると居室に案内された。8畳ほどの広さの個室だ。備え付けのベッド脇に座らせ、これからのことをしっかり話そうとしたその時。おかんは肩を震わせ、しゃくりあげるように泣きだした。
あまりの反応にビックリした。泣かせるようなひどいことはしていないはず。戸惑っている息子を、おかんは振り絞るような声で責め始めた。




















