(1)イベルメクチンはなぜ新型コロナ禍で使われなかったのか
つい数年前、新型コロナが世界中を席巻したことも、今やうたかたのようだが、私自身が今も気になっているのは、大村智博士らが発見してノーベル生理学・医学賞を受賞したイベルメクチンのことである。
新型コロナの感染者が出始めた頃だった。拙著「『副作用のない抗がん剤』の誕生」(文芸春秋)で紹介した故・前田浩熊本大名誉教授から、イベルメクチンは抗寄生虫薬で知られているが、それはごく一部で、強い抗ウイルス作用もあるから特効薬になるかもしれない、と言われた。実際、2020年4月、オーストラリアの大学はイベルメクチンが「新型コロナウイルスの複製を阻害する」と発表している。それ以外にも新型コロナに有効という情報は、ネット上でもよく見られた。
大村博士も、北里病院でイベルメクチンの治験を開始すると発表し、海外では「イベルメクチンがパンデミックを終息させるだろう」と予言する医師もいたほどだった。
ところが、いつの間にかそんな情報は消えていった。海外で消えるのはともかく、日本発のイベルメクチンが日本でも話題にならなくなったのだ。


















