「乳がんの治療」が心臓にダメージを与えるケースがある
また、直接的に血管を詰まらせるわけではないものの、患者さんの心機能が低下していたり、高血圧があったりすると、相対的に冠動脈血流不全を来して虚血性心不全を引き起こす危険性もあります。そのため、アントラサイクリン系の抗がん剤を使用する場合は、投与前や投与中に心エコーを中心とした心機能検査が行われます。
■心毒性がある分子標的薬も
ほかには、先ほど触れたHER2標的治療で使われる分子標的薬(トラスツズマブ、ペルツズマブ)にも心毒性があります。これらの分子標的薬は、結合する部位や作用メカニズムは異なりますが、どちらもがん細胞の表面にあるHER2タンパクという受容体に結合し、増殖シグナルを阻害してがんの増殖を抑えます。ただ、HER2タンパクは心筋細胞にも存在し、細胞の保護や修復に関わっているため、分子標的薬がその機能を阻害すると心機能の低下につながってしまうのです。
ルーマニアのブカレスト腫瘍研究所における研究では、トラスツズマブやペルツズマブによるHER2標的治療を受けた乳がん患者の27%に心毒性が確認され、高齢、高BMI、高血圧が心毒性リスクの増加と有意に関連していたといいます。HER2標的治療は、高い治療効果が期待できる一方で、心臓に大きなダメージを与えるリスクも高いといえるでしょう。


















