ガッツ石松さん 酒粕と鮭の頭を使った郷土料理しもつかれ
おふくろの味っていうと、雨の日に作ってくれたサバカレーかなあ。肉じゃなくて、代わりにサバの缶詰を入れたカレーライスのことだよ。
栃木県清洲村(現・鹿沼市)にあった実家は“村一番”ってくらい貧乏で、肉なんて、とても買えなくてさ。なんせ、住んでたのは6畳一間に台所がついただけの掘っ立て小屋。ポットン便所と五右衛門風呂は別棟にあってね。屋根が壊れてても、お金がないから直せなくて、雨漏りする上に隙間だらけ。朝起きて目を開けたら、お天道様が壁とかドアの隙間から見えるんだから参っちゃうよ。
そんな貧乏なのに、親父は病弱だったから働けず、子供は三男坊の俺を含めて全部で4人。物心ついたころから、おふくろがニコヨンに出て家計を支えてた。ニコヨンって、わかる? 土木作業員なんだけど、日給が男は250円、女は240円だから、ニコヨン。
当時、土木仕事は雨の日が休みなの。だから、おふくろが煮込みとかカレーとか、少し手間のかかる料理を作ってくれてね。家計的には雨は困るんだけど、幼い頃はそんなことわからない。普段は朝早くから現場に行って家にいないおふくろの姿が見えると、それだけでうれしかったよ。
そして、漂ってくるカレーのいい匂い。お腹が余計に減ってきて、ジッとしてられないの。邪魔にしかなんないのに、まとわりついて、出来上がるのを楽しみにしてたもんさ。
ごはんは当然、麦飯。「貧乏人は麦を食え」って言った総理大臣がいたけど、俺が中学を卒業して社会人になった1964年くらいまでは、米を作ってる農家でも麦飯を食うのが当たり前。白米のごはんを食べた時は、あまりのおいしさにびっくりしたよ。
2月になるとよく食べたのが栃木の郷土料理でもある「しもつかれ」だな。2月最初の午の日、“初午”に神社にお供えする料理なんだけど、鍋にたーくさん作っておいて、それだけで食べたり、熱々の麦飯の上にのせて食べたり……。酒粕が入ってるから、作りたてを食べると体がホカホカあったまってくる。冷蔵庫がない時代でも長持ちするんだ。まあ、先人の知恵、保存食だな。
必ず鮭の頭を使うってのがミソでね。海がない栃木なのに不思議だろ? これ、もともとは正月用の塩鮭の余り物を使ってたんだけど、捨てちまうのがもったいないから有効活用したってわけ。調理方法はだいたいどこの家でも同じなんだけど、調味料の使い方がそれぞれの家庭で違っててね。我が家では隠し味にお酢を使ってた。
今でも、栃木に帰って「しもつかれ」を食べると、苦労しながら俺たちきょうだいを育ててくれたおふくろを思い出すよ。
















