鎮守府開庁から今年で130年 長崎県佐世保市で巡る日本遺産

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「ニイタカヤマノボレ」を発信

 明治時代、旧軍港4市(横須賀、舞鶴、呉、佐世保)には海軍の機関である鎮守府が置かれた。佐世保には1883(明治16)年に、東郷平八郎の軍艦「第二丁卯」が鎮守府の候補地を探すために訪れた。湾口は狭いが、湾の大きさは横浜港の3倍、長崎港の10倍を誇る佐世保港は軍港としての評価が高く、1889(明治22)年に鎮守府が開庁した。今年で130年を迎える。日本の近代技術を生んだ軍港の歴史を伝える史跡を巡った。

  ◇  ◇  ◇

「鎮守府」は2016(平成28)年に日本遺産に認定された。その構成文化財のひとつが、「旧佐世保無線電信所(針尾送信所)施設」(佐世保市針尾中町382)。1918(大正7)年から4年をかけて建設された長波送信施設だ。3本の巨大な無線塔は約300メートル間隔で正三角形に配置されていて、カメラには収まり切らない大きさ。この塔から、太平洋戦争の開戦を告げる暗号文〈ニイタカヤマノボレ1208〉を発信したと伝わる。

「日露戦争を機に無線通信の重要さを認識した海軍は、千葉県船橋市、台湾の高雄市、そしてこの針尾と3カ所に鉄塔を建てましたが、現存しているのはここだけです。針尾は九州で一、二番に地盤が固く、電波を遮る高い山がないことから選ばれたといわれています」(針尾無線塔保存会の田平ヨシノさん)

 巨大な電波塔は、佐世保で発展した鉄筋コンクリート技術によるもの。なかなか迫力がある。

 無線塔の中心には電信室という通信施設もある。半地下式の一部2階建てで、「外から見えるのは2階部分で、受信発信機がありました。終戦後、左半分を海上保安部、右半分を海上自衛隊が1997(平成9)年まで使用しています」(田平さん)。本施設の歴史背景や無線技術などが評価されて、重要文化財になっている。

★見学は無料(ガイドは要事前連絡、℡0956・58・2718)

3時間の散歩ツアー

  今回は鎮守府を巡る徒歩ツアー「海軍さんの散歩道」に参加した。最初に向かったのは「市民文化ホール(旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館)」(佐世保市平瀬町2)。1923(大正12)年に第1次世界大戦の凱旋記念館として建てられた。こちらも、日本遺産の構成文化財だ。

 壁にはレンガ、内部列柱は鉄筋コンクリート造りの洋館だ。戦後は米軍のダンスホールや映画館として利用されていたという。現在は、文化ホールとして使うほか、鎮守府に関するパネルや写真が展示されている。

 海上自衛隊佐世保地方総監部敷地内の地下壕にある「防空指揮所」跡も訪れた。普段は一般の人が立ち寄れない場所で、1944(昭和19)年に佐世保鎮守府が運用を開始し、管区内の防空指揮を行ったところ。佐世保空襲でも被害を免れている。内部は迷うほど広く、入ると体温が急激に冷える。

 日本で2番目にできた大きな橋という佐世保橋も興味深いものだ。

「欄干には桜と錨のマークがほどこしてあります。1935~45(昭和10~20)年まで海軍橋と呼ばれていました」(元自衛隊OBで、ボランティアガイドの松尾進さん)

 海上自衛隊佐世保史料館も見応えたっぷり。

「東郷平八郎の書や士官室で使用した皿も展示しています」(松尾さん)

 下士官兵集会所跡碑、2017年3月に引退し護衛艦「くらま」内の食堂をイメージした「くらま食堂」も見学できて盛りだくさん。3時間かけて回ったが、あっという間だった。

★申し込み・問い合わせは佐世保観光情報センター(℡0956・22・6630=事前予約時に生年月日、現住所などを提出)

新旧佐世保グルメ

   佐世保グルメといえば、「佐世保バーガー」と「自衛隊カレー」。

「佐世保バーガー」は1950(昭和25)年ごろに、米海軍から直接レシピを聞いたのが起源とされる。

 ただしその名称は、今年7月に商標登録が取れたばかり。認定されるのは、①1年以上、市内に事務所を置いていること②注文を受けてから作ること、の主に2つ。認定店には「バーガーボーイ」の看板が設置されている。味や大きさは店ごとに異なる。

 写真は、「BigMan」(℡0956・24・6382)の元祖ベーコンエッグバーガー。

 海上自衛隊、陸上自衛隊、海上保安部の3つの部隊のカレーを味わえるのも、佐世保ならではだ。市内の飲食店がレシピをもとに再現している。現在は市内19店舗で19部隊のカレーを提供する「させぼ自衛隊グルメ シールラリー」を開催中。集めたシールの枚数に応じて、プレゼントがもらえる。

 市内の料亭「ささいずみ」(℡0956・23・3933)などで展開する「長崎ハーブ鯖」も注目されている。ナツメグやオレガノなどハーブをまぜた飼料を与えて育てられたため、青魚特有の臭みがなく、生でも安心して食べられる。

(取材・文=小野真依子/日刊ゲンダイ)

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